公益財団法人テルモ生命科学芸術財団 Terumo Foundation for Life Sciences and Arts

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国際賞

記念講演

組織工学・バイオマテリアルが21世紀の医療おフロンティアを切り拓く

マサチューセッツ工科大学 教授
ロバート・サムエル・ランガー

ロバート・サムエル・ランガー

私は化学工学の出身で、MITで1974年に博士号を取得しました。しかし、化学エンジニアの道に進むのではなく、何かもっと人の役に立つことをしたいという夢を持っていました。そこで私はジューダ・フォークマン先生に手紙を書き、先生の元で研究に取り組むことになりました。そこで与えられた研究テーマが、血管新生を止める方法を考えろということでした。研究の結果、私たちは血管新生を阻害する化学物質をゆっくりと放出できるポリマーを発見しました。今日では実にたくさんの血管新生阻害剤が承認され、世界の1500万人以上の患者さんが治療を受けるまでになっています。

さらに、私たちはDDS(薬剤送達システム)に取り組み、最近では薬物放出量を調節できる標的化ナノ粒子を開発しています。現在、抗癌剤「ドセタキセル」をナノ粒子に封入して治療する臨床試験が進行中です。また別のDDSでは、マイクロチップを体内に埋め込み、遠隔操作で薬剤の放出を調整する方法を開発し、これについても臨床試験が行われています。

組織工学の分野では、人工臓器や組織再生の研究を進めています。すでに動物モデルで軟骨、心臓弁、骨、肝臓、腸、泌尿器系、腱および筋肉を作ることに成功し、ヒトの皮膚、骨、血管、膀胱、軟骨の形成も実現しています。たとえば、ヌードマウスの背中に生分解性ポリマーで耳の形にしたものを作り、これに軟骨細胞を導入してマウスの皮下に埋め込み、耳がついたマウスを作りました。実際に人間の耳で作ったことはありませんが、ウサギの耳の中に作ると、人間の耳と同じ形になります。このテクノロジーはさまざまな企業にライセンスしていますが、やけどを負った子どもの皮膚を再生するなど、実際の臨床効果を上げています。

組織工学を使って損傷脊髄の再生にも取り組み、マウスやサルでの実験では、神経幹細胞を移植したところ明らかな改善が見られています。同様の研究は日本をはじめ多くの国で行われており、組織工学が新しい治療へとつながっていくことを期待しています。 今後組織工学やバイオマテリアルは、工学、化学、医学、薬学など他分野の先端領域と連携し、21世紀の医療でさらに大きな役割を果たすでしょう。

★講演の詳細は、当財団の25周年記念誌(2012年11月発行予定)に掲載します。ご希望の方は、財団宛、お問い合わせください。

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