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第28回 フィールドワークと数理モデルで、カエルの合唱の謎に挑戦!~同志社大学 生命医科学研究科 脳神経行動工学研究室 合原一究先生を訪ねて~

♪カエルの歌が聞こえてくるよ クヮ クヮ クヮ♪ だれもが知っている童謡「かえるの合唱」。春になると田んぼや水辺で一斉に鳴きだす二ホンアマガエル。彼らがそれぞれ勝手に鳴いているのか、みんなで声を揃えて鳴いているのか、それとも交互に鳴いているのか、詳しいことはこれまでわかっていなかった。同志社大学の合原先生は、カエルの鳴き声の法則に興味を持ち、フィールドワークと、物理学と数学をベースとする「数理モデル」を組み合わせて「カエルの歌」の謎に迫っている。

アマガエル同士は交互に鳴いて縄張りを主張していた!

ニホンアマガエル

ニホンアマガエル

二ホンアマガエルは、鹿児島県から北海道までほとんどすべての地域に棲息して、田んぼに水が入る春ごろから鳴き始める。しかし、カエルたちがどんな法則で鳴いているのかについては不明なことばかりだった。なにしろ、広い田んぼでたくさんのカエルが一斉に鳴きだすと、一匹一匹の鳴き声を聞きわけるなどということは不可能に近いからだ。またレコーダーなどで声を拾おうとしても、周囲のさまざまな音源と混ざり合って、どのカエルが鳴いているかを特定することはなかなか難しい。

合原先生は、それでもなんとかカエルの合唱の法則を探ろうと研究を始めた。
「私は二つの方向からこのテーマに迫ることにしました。ひとつが、カエルが鳴いている現場で一匹一匹のカエルがいつどこで鳴いているのかを識別することです。そのために、私たちは『カエルホタル』という音声を視覚化するデバイスをつくりました。カエルの鳴き声(音声)をマイクで拾って検出し、その音を光に変換し、LEDで点滅させます。この点滅する様子を動画で撮影して、どこでどのカエルが鳴いているのか、その時空間パターンを記録するのです。私たちは40台のカエルホタルを40~50cm間隔で田んぼに設置して実験を行いました」

カエルホタルはスマホよりひとまわりほど小さい。カエルの声を拾うと、LEDランプが光る。

カエルホタルはスマホよりひとまわりほど小さい。カエルの声を拾うと、LEDランプが光る。

カエルホタルを田の畔に設置

カエルホタルを田の畔に設置

もうひとつがこうしたフィールドワークで集めたデータを「数理モデル」を使って分析することだった。
「数理モデルとは、簡単に言えば、時間的空間的に変化する現象を数式を使って表現するもので、私が使ったのは『結合振動子系』という理論です。これも簡単に言うと一定のリズムを持つものがお互いに影響及ぼし合う状況の中で、集団のリズムの変化を記述する理論です」
「結合振動子系」と聞いても何やらチンプンカンプンだが、ある空間にいるカエルの集団が、時間を追ってどのように影響し合いながら鳴いているのかを解析する理論であるようだ。この理論を応用した数式を使ってシミュレーションしたところ、近くにいる二ホンアマガエル同士はタイミングを合わせて交互に鳴くという法則を再現できたという。

それにしても二ホンアマガエルはなぜ交互に鳴くのだろう。合原先生はこんなふうに推測する。
「鳴くのはオスだけに限られていて、彼らはメスに対する求愛と自分の縄張りを主張するために交互に鳴いているのだと考えられています。カエルには鼓膜があるので、近くで鳴いている仲間の声は聞こえています。縄張りや愛を訴えるためには、隣のカエルが鳴いている時ではないほうが、アピールできるわけです」

カエルホタルを使ったカエルの合唱の秘密に迫る研究は、“Spatio-Temporal Dynamics in Collective Frog Choruses Examined by Mathematical Modeling and Field Observations.”というタイトルで、2014年1月にネイチャー・パブリッシング・グループの総合科学誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載され、 「カエルの合唱には数学的な法則があった!」として、新聞記事などでも興味深い発見として取り上げられた。

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カエルの鳴き声に反応してカエルホタルが光る様子

合原一究
合原 一究(あいはら・いっきゅう) 同志社大学 生命医科学研究科 脳神経行動工学研究室

1982年千葉県生まれ。2001年3月県立千葉高校卒業。06年京都大学理学部理学科卒業。08年京都大学大学院 情報学研究科複雑系科学専攻修士課程、11年3月同大学院 理学研究科・物理学第一教室博士課修了。11年~14年理化学研究所 脳科学総合研究センター研究員。14年4月より同志社大学 生命医科学研究科(日本学術振興会 特別研究員PD)。

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