中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

SCIENCE TOPICS いま注目の最先端研究・技術探検!

第1回 昆虫の脳をロボットで再現、脳の秘密に迫る~東京大学先端科学技術研究センター・神﨑研究室を訪ねて

東京の井の頭線・駒場東大前駅から約5分、閑静な住宅街に広がる東京大学・駒場IIキャンパスの先端科学技術研究センターでは、年に一度の公開キャンパス2009が行われていた。ここは文字通り、日本の最先端の科学技術を研究する機関。知能工学、分子生物学、遺伝子工学、材料工学など、多彩な分野の頭脳が集まっている。
4号館の神﨑亮平教授の研究室では、本物のカイコガ(蚕の成虫)が操縦するミニ四駆みたいな「昆虫操縦型ロボット」が展示されていた。いったいどんなしくみなんだろう? みんな興味津々でのぞき込んでいる。
公開キャンパスで、「昆虫操縦型ロボット」を公開しているところ。

公開キャンパスで、「昆虫操縦型ロボット」を公開しているところ。

メスのフェロモンに向かってGO!

ほら、カイコガがパイロットだよ!

昆虫操縦型ロボットをよーく見てみると、ピンポン球ぐらいの大きさのボールの上に、背中を固定された本物のカイコガがのっている。こいつがパイロットだ。カイコガが脚を動かすと、それにあわせてボールも回転する。その回転の速度や方向を赤外線センサーで読み取ってモーターに伝達し、ロボット車が動くというわけ。

カイコガがパイロットとなって操縦する「昆虫操縦型ロボット」。ボールの上をカイコガが動く時のボールの動きを赤外線センサーで正確に読み取って、カイコガの動きと同じようにロボットが動く。ロボットを操作して、カイコガが直進したときに右に旋回するようにもできる。このような操作に対しても、カイコガはそれを補正して、ロボットを操縦できる。


このロボットは、いったい何に向かって動いていくのかな?神﨑先生が教えてくれた。
「オスのカイコガは、メスの出すフェロモンをキャッチするセンサーを持っています。ガの仲間は、私たちにはわからない数kmも先のかすかな匂いだってとらえて進んで行くんですよ」

カイコガの操縦でメスのフェロモンに向かって進んでいくよ!

このクルマを細工して、カイコガがちょっと動くと、その4倍もの力が働いて、方向がずれてしまうようなしくみを作ったところ、カイコガは最初は運転にとまどっても、すぐにそのギャップを調整して、目指す方向に運転できるようになるという。カイコガは高い環境適応能力を持っているんだ。

カイコガ(左)とカイコガがパイロットとなって操縦する「昆虫操縦型ロボット」(右)がフェロモンをめざして定位する様子。「昆虫操縦型ロボット」はカイコガと同じようにフェロモンに定位するのがわかる。

神﨑亮平教授
神﨑亮平(かんざきりょうへい)
東京大学先端科学技術研究センター 生命知能システム分野 教授

1957年和歌山県生まれ。1986年筑波大学大学院生物科学研究科修了。理学博士。アリゾナ大学神経生物学研究所博士研究員、筑波大学教授などを経て、2004年東京大学大学院情報理工学系研究科教授。2006年より現職。アリゾナ大学神経生物学部門 Adjunct Professor。脳を昆虫とロボットという切り口から明らかにする研究で知られる。カイコガの脳を対象にして、遺伝子から神経細胞・神経回路・行動にわたる詳細な生物学的な分析結果から、情報学や工学によって構築した脳のモデルでロボットを制御する。また、昆虫が操縦するロボットや昆虫の脳の信号で制御する昆虫サイボーグの研究で注目を集める。主な著書に『昆虫ロボットの夢』『昆虫の脳を探る』『ロボットで探る昆虫の脳と匂いの世界』などがある。

PAGE TOPへ
ALUSES mail