中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

3月16日&17日に最新の科学・技術を青少年にアピールする「科学・技術フェスタ」に出展! 17日は、再生医療の最先端で活躍する研究者によるパネルディスカッションを開催

網膜再生へのチャレンジ 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト プロジェクトリーダー 高橋政代先生

iPS細胞からつくった網膜細胞で網膜を再生

高橋政代先生

今をときめくiPS細胞を使って眼の奥にある網膜を再生する研究をしています。
眼科医療はすごい進歩をしてきて、20年前には治らなかった病気がどんどん治るようになっています。それでも、眼の奥にあって光を受けとる網膜は脳と同じ中枢神経なので、一度悪くなってしまうと元に戻ることはありません。このため私たちは、ES細胞やiPS細胞から網膜細胞や網膜色素上皮細胞をつくり出し、移植する再生医療に取り組んでいます。
ES細胞は、受精卵がちょっと育ったときに、この中の細胞を取り出してつくった細胞で、やがて赤ちゃんになる細胞ですから体中のどんな細胞にもなることができます。でも赤ちゃんになるはずの細胞を壊すということで倫理的な問題があります。一方、京都大学の山中先生がつくったiPS細胞は、受精卵からではなく、人間の大人の皮膚や血液などの細胞を使い、そこにちょっと遺伝子を入れ込むだけでES細胞と同じようにどんな細胞にでもなれるものです。受精卵からしかつくれないと思っていたものを大人の細胞からつくり出した画期的な研究で、他人の細胞ではなく自分の細胞からつくった細胞だから、拒絶反応が起こらないという利点もあります。
私たちはこれまでマウスを200匹以上使ってiPS細胞による網膜治療の安全性の研究を続けてきて、このほど厚生労働省にヒトへの治療をめざした臨床研究の実施計画を申請しました。ここで大切なのは、「安全」を追求する時間とコストと、患者さんへの治療の有効性をどう判断するかということです。リスクはゼロにはなりません。安全性をコンマ数%高めるのに、膨大なお金と10年もの時間がかかるとしたら・・・・。みなさんにも考えていただきたい問題です。

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夢の実現を信じて進めば、多くの人がパスを投げてくれる

私は、網膜を再生する医療技術の開発研究を15年も続けてきました。かつては網膜の再生は不可能と考えられていて、できるかどうかわからないことをコツコツと続けるのは辛いのですが、ちゃんと走っていれば、自分だけではできないことも多くの人が支援してくれてできるようになるということを分かってほしいと思います。それは中学時代にやっていたバスケットボールにも通じるものがあります。パスを受けるときには走ってないといけない。待っていてもパスはこないんですね。ボールがあるところに走るのではなく、パスが来ると思うところに走ることが大切です。私たちの研究でも同じことが言えます。
15年前に「網膜の再生の研究をします」と言ったら、「脳の再生と一緒だから無理」と言われました。次に「ES細胞を使って」と言ったら、「ES細胞は臨床には使えない」と大部分の人は言いました。でも今、アメリカではES細胞からつくった網膜細胞を治療に使っています。次に言われたのは、「iPS細胞はがん化する危険があるから臨床応用を考えてはいけない」ということでしたが、もうまもなく実現できるところまで来ています。
多くの人があれこれ言っても、「でも私は違う」と思ってやってきたので何とか到達したわけで、みんなと同じことを考えていたら、ここまで来られなかったでしょう。

「できない」と諦めてはダメ

そこで私の中学・高校時代を振り返ってみると、中学・高校ともに、とても自由な雰囲気の中で物事を自由に考えることができました。勉強するのもしないのも自分の責任というような学校でした。また、たっぷり時間があったので自分の強みは何かを一生懸命考えていたし、何よりも、どうやって人の気持ちを引くか、引きつけるかということを毎日考えていたような気がします。それと、人と一緒ではいやだから、とにかく新しいことをしたいと中学・高校のときから思っていて、服装も私服でしたが流行とは違う服を着ていた記憶があります。

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15年は本当に長いし、1人ではできなかったんですけども、ただやりたいと思うだけでなくて、心からやりたいと願うと、できていくんですね。道は開けるし、パスがいっぱいくるし、それと自分の利益以外の目標を持つと、協力者が次々にあらわれる。そして、自分の考えを信じること、同時に自分の考えも含めて常に物事を疑うこと。人生に無駄なものはないし、「できない」と諦めることが一番いけないんじゃないかなと思っています。

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