中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

「サイエンスカフェ2013」レポート 最先端の生命科学を“体感”した2日間 関東1都6県の高校生31名が参加

[2日目———実習と自由討論]実習で作ったのは・・・ガシャポン人工心臓!?

施設見学のあとは、いよいよ実習だ。午前中に1つ、午後2つの計3つのプログラムが用意され、班別に取り組む。
実習プログラムは(1)温度応答性材料の実験と細胞シート操作の実際、(2)大動物実験室見学・実習、(3)簡易型人工心臓の作製。(1)と(2)については昨年のサイエンスカフェでも実施しレポートしているので(昨年のレポート参照)、今回は(3)簡易型人工心臓の作製についてレポートしよう。

1分間に4.5ℓの水を約160㎝の高さにまで持ち上げる心臓パワー

まずは先生(早大・梅津研究室)から心臓の仕組みについて教えてもらう。
「心臓は筋肉の収縮と拡張を繰り返すことで全身に血液を送り出すポンプとして働いていて、1分間に4.5ℓもの水を約160㎝の高さにまで持ち上げるほどの力を持っているんだよ」
心臓は2つの心房と2つの心室の4つの部屋から成り立っている。心房は血液を留める部屋で、心室は血液を送り出す部屋。中でも大動脈に血液を送り出す役割をしているのが左心室。心臓のポンプ機能が悪くなると心不全になってしまうが、一番負担のかかりやすいのが左心室であるため、ここが機能不全に陥ると心不全になりやすい。
重症の心不全になってしまうと薬の治療では治らなくなり、心臓移植や人工心臓によって機能を代替したり補助したりする必要が出てくる。心臓移植は高い成績が得られる治療法だが、ドナーが見つかって移植が行われるまでには平均で2年間ぐらい待たなければならない。心臓移植が行われまでの間のつなぎとして、左心室の働きを助けて心臓のポンプ機能を補助するのが補助人工心臓だ。

実際に動いている体外設置型、体内埋め込み型の人工心臓にも触ってみた。
「今は水を使っているけど、本物の血液を流したらどのくらいのストレスがかかるのですか?」
「動かすための消費電力は?」
「耐久試験を高速で行うことはできますか」
高校生たちからは次々に質問が飛ぶ。

実際の人工心臓と原理は同じ

人工心臓の働きを学んだ上で、その人工心臓を「作ってみよう」というのが今回の実習だ。え? 人工心臓ってそんなに簡単に作れるの?
人工心臓って最先端の技術のはず。事実そうだが、原理自体は実に単純なのだという。
現在、国内でもっとも症例数の多い補助人工心臓に「ニプロ社製補助人工心臓」がある。これは「ダイアフラム型血液ポンプ」といって、流入口と流出口に一方向のみに血液を流す人工弁を取り付け、ポンプは血液の入る血液チャンバーと空気の入る空気チャンバーにダイアフラム(空気圧で作動する調整弁)で隔てられていて、駆動装置により空気圧を制御することでダイアフラムを動かし、拍動流を発生させる。これと同じような形態・機能を持つポンプの模型を作るのだ。
梅津研究室のメンバーが知恵を出し合って考案したのは“ガシャポン人工心臓”。
使う材料はなんと、オモチャ屋の店先でよくみる“ガシャポン”のカプセル、それにビニールチューブ、塩ビ管、ゴムシート、シリンジ(注射器)、薄いビニールの膜。
ガシャポンが左心室、ビニールチューブや塩ビ管が血管、ゴムシートが弁の役割を果たし、薄いビニールの膜はダイアフラムの代わりで、これは研究室で作製したもの。これらを接着剤や結束バンドで固定し、ガシャポンの中にビニールの膜をはさんで、ガシャポンのお尻に空気を送り込むシリンジを取り付ければ完成。

人間の心臓ってすごい!

できあがった“ガシャポン人工心臓”でさっそく実験。
水を使って、どれだけ高いところまで送り出せるかを試してみる。高校生たちは自分が作った“人工心臓”に、シュッシュッとシリンジで空気を送り込む。1分間で送り出した水の量を計測し、本物の心臓の機能と比べるのだが、なかなか目盛りは上がっていかない。人間の心臓は、1分間に4.5ℓの水を約160㎝の高さ世まで持ち上げる力があるが、シリンジでいくら空気を送り込んでもせいぜい2ℓとか3ℓ。ヘトヘトになるまでシリンジを押して、4ℓを超えるところまでいった高校生に拍手が起こった。
「人間の心臓って、すごい働きをしているんだね」
高校生たちの実感だった。

大動物実験室見学・実習

内視鏡を操作し、消化管の状態を確認・撮影

皮膚モデルを使って、手術用縫合糸で縫合処置を体験

(左)超音波検査装置で風船の中身を探る
(右)X線CT装置を見る

温度応答性材料と細胞シート

(左)温度変化でゲルに変化する高分子溶液を観察
(右)海藻由来の天然高分子でイクラのようなゲルカプセルができる

電動ピペッターを使い、培養細胞の操作を体験

細胞シートの移動操作にチャレンジ

「進路の幅が広がった」という声も

実習を終えたあとは全員が集まっての自由討論。司会は東京女子医科大学大学院先端生命医科学研究所教授の大和雅之先生。2日間の感想とともに、将来の進路や志望理由についても語り合った。医者を目指すのか、研究者か? 病棟薬剤師に期待される役割とは? 大和先生はアメリカのメディカルスクールの例などを紹介しながら、これから進路を考える上のアドバイスを送ってくれた。
最後は岡野先生からの修了証の授与。岡野先生は授与にあたって次のように語った。
「あなたたちはまだステムセルつまり未分化の段階ですが、これからいろんなことができる可能性を持っています。何もないところに自分の絵を描くことが大事なので、大いに勉強していってください。今回のサイエンスカフェを主催したのはテルモ科学技術振興財団というとてもすばらしい財団です。私たちはこの財団の活動に共鳴して共催団体となり、みなさんと一緒に2日間を過ごしたわけですが、あなたたち高校生を見ながら、TWInsの若い研究者たちも逆にあなたたちから学ぶことがあったと思います。これからもお互いに高めあっていきましょう」

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