中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

「サイエンスカフェ」レポート 高校生が最先端の生命科学に触れた一日

人間の体の中には流体の回路がある!

続いて講義した早稲田大学理工学術院総合機械工学科教授で東京女子医大・早稲田大共同大学院専攻長・TWIns早稲田大学センター長の梅津光生先生の演題は「バイオエンジニアが先進医療に挑戦する」。

梅津先生は人工臓器研究の世界的パイオニアの一人。早大理工学部卒業後は大阪にある国立循環器病センター研究員となり、同センター研究所の開設のメンバーとして補助人工心臓の開発プロジェクトに参加。以来、40年以上にわたって人工心臓の開発に携わっているが、梅津先生のように患者さんに使用されている複数の人工心臓の開発に携わったバイオエンジニアは世界的にもほとんどいないといわれる。

梅津先生が実際に持ってきてくれたのが体外設置型の補助人工心臓だった。これまで1000人以上の患者さんに使われ、現在も心臓移植のため待機中の80人の患者さんがこの補助心臓を使用中だという。
受講中の席にまわってきた本物の補助心臓を実際にさわってみる高校生たち。価格が1個300万円すると聞いて、みんな「えーっ!」。

梅津先生は講義の中で、医工連携によるバイオエンジニアリングを研究する世界に入ったときのエピソードを紹介してくれた。
実は梅津先生は小さいときから電車やバスが大好きで、将来は鉄道関係の仕事に携わりたいと思っていたという。大学に進み、新幹線の関ヶ原の消雪用スプリンクラーを開発した機械工学科の土屋喜一教授の研究室に入ったところ、土屋教授からいわれたのは、「これからは医学の時代だから医学を勉強しなさい」ということだった。「いや、ぼくの専門は機械工学です。医学なんて関係ないじゃないですか」というと、土屋教授はこう諭した。「人の体を見てみなさい。人の体には血液が流れているが、あれは流体の回路であり、神経が血液の回路をコントロールしている。いってみれば流体のコントロールの世界だ。機械工学と医学とどこが違うんだ」。それを聞いて梅津先生は「なるほど」と思ったという。
物事を考える時に「関係があるかないか」ではなく、それを「どうこじつけていけるか」を考えることが大切であるとも話された。

人工心臓の開発を始めるようになったエピソードも意外だ。
1974年、東京女子医大との共同研究のため、女子医大の地下の実験室に大学院生として通うようになった。すると、そこでは野犬を心臓の実験に使っていた。梅津先生は大の動物好きだった。実験に使われていたのはどれも病気を持っていて3日もすれば死んでしまう犬だったが、実験により自分が手を下して死んでいく犬がかわいそうで、トラウマになってしまった。それで梅津先生は、「よし、それだったら、動物実験をなくすようなテクノロジーで世の中を驚かせてやろう」と誓ったという。それで取り組み始めたのがシミュレーターの研究だった。
こうしてバイオエンジニアリングを開拓していったという話に、高校生たちは興味津々で聞いていた。

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