フクロウ博士の森の教室「からだを復元させる医療の話」

第27回 iPS細胞によるパーキンソン病治療最前線 京都大学iPS細胞研究所 臨床応用研究部門 高橋淳教授インタビュー 臨床研究いよいよスタートへ。将来は脳の回路もつくりたい

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高橋 淳(たかはし・じゅん)
1986年京都大学医学部卒業。同年同大学附属病院脳神経外科研修医。93年京都大学大学院医学研究科博士課程修了後、京都大学医学部附属病院脳神経外科助手。95年から2年間、米国ソーク研究所ポスドク研究員。2003年京都大学医学研究科脳神経外科講師。07年同大学再生医科学研究所生体修復応用分野准教授、などを経て、2012年より京都大学iPS細胞研究所教授。

パーキンソン病は、脳の神経伝達物質のドーパミンが欠乏して起きる難病で、症状が進行すると薬でコントロールすることが困難になる。京都大学iPS細胞研究所の高橋淳教授は、iPS細胞からドーパミンを分泌する神経細胞をつくり患者の脳に移植してパーキンソン病を治療する再生医療の研究を続けており、2015年にも臨床研究が開始される見通しだ。先生が脳の神経再生に取り組むようになったきっかけや、これからの研究テーマをうかがった

これからは細胞移植の時代が来る

───高橋先生がパーキンソン病の再生医療に取り組もうと考えた理由はどんなところにあるのですか。

高校時代から脳にすごく興味を持っていて、将来は脳外科医になろうと決意し、京大医学部に入りました。入学後も日本を代表する脳科学者の伊藤正男先生の『脳の設計図』などを読み、ますます脳の世界に魅了されました。
1986年に医学部を卒業するとき、迷わず脳神経外科を選びました。脳の内部を合法的に覗くことができるのは脳外科だけだと思ったわけです(笑)。いざ脳外科に入ってみると、脳血管障害にしても脳腫瘍にしても医療の現場ではむしろいかに脳にメスを入れないかのほうが大切なのです。ちょっとがっかりしましたね(笑)。
脳についてさらに知りたいと大学院に進んだとき、当時の京大脳神経外科の菊池晴彦教授から「これからは再生医療が重要になってくる。君には脳の再生をやってもらいたい」と言われたのです。まだ再生医療などという言葉もない頃のことでしたが、神経細胞移植となると脳に直接触れる機会があるわけで、喜んでその道に進みました。

───当時はすでに細胞移植などが行われていたのですか?

1980年代後半に入って、欧米では人工妊娠中絶胎児の黒質細胞の移植が行われるようになり、細胞移植によるパーキンソン病治療の研究が始まっていました。この方法では一人の患者さんのために胎児の脳が5~10体分も必要で、日本では倫理的な問題もあり実施されたことはありません。
マウスのES細胞は樹立されていましたが、ヒトES細胞はまだ先の話で、脳神経の再生にかかわる神経幹細胞の概念が出はじめたばかりの頃です。そこで、この分野の最先端の研究を進めていたアメリカのソーク研究所のフレッド・ゲージ研究室に留学しました。1995年のことです。
当時、研究所の中で「何か面白い細胞ができた」というので、その細胞を研究するプロジェクトチームができ、私も一員に加わることができました。神経幹細胞を脳から分離・培養することに成功して、脳の再生医療分野に新しい可能性が開かれたのです。
幹細胞なら増殖できるし、培養条件を変えればほしい神経細胞が大量に手に入るはずで、そうなれば、脳神経に関係する病気の治療に応用できるのではないかと考えるようになりました。

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