フクロウ博士の森の教室「からだを復元させる医療の話」第3回 ES細胞とiPS細胞 からだを再生させる細胞の話 京都大学 iPS細胞研究センター 青井貴之教授 インタビュー iPS細胞研究の可能性と課題は?

フクロウ博士の森の教室「からだを復元させる医療の話」 第3回 iPS細胞研究の可能性と課題は? 京都大学 iPS細胞研究センター 青井貴之教授 インタビュー  再生医療や創薬など、さまざまな可能性を秘めたiPS細胞安全性の検証が大きな課題

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青井 貴之(あおい・たかし)
1973年生まれ。神戸大学医学部を卒業後、天理よろづ相談所病院、聖路加国際病院、日本赤十字社和歌山医療センターで臨床医として勤務後、京都大学大学院医学研究科消化器内科学分野で博士課程を修了。2005年より山中研究室の大学院生、後に研究員としてiPS細胞研究に携わり、2008年にマウスの胃および肝細胞由来のiPS細胞樹立成功に関する論文の筆頭著者となる。2009年11月、CiRA教授。iPS細胞の安全性の検証と、将来の臨床研究にそなえた法制対応に注力している。

いま、マスコミでもしばしば取り上げられている再生医療の期待の星、iPS細胞。世界に先駆けてiPS細胞をつくりだした京都大学の山中伸弥教授のもとで研究を続けてきた青井貴之教授に、iPS細胞の基本知識と可能性、今後の課題などをうかがった。

世界に先駆けてiPS細胞をつくる

阿形清和教授
───最近、新聞やテレビなどで、iPS細胞についての報道をよく見聞きします。iPS細胞とはどんな細胞なのですか。

私たちのからだは、神経細胞、筋肉細胞、皮膚細胞など、約200種類もの細胞でできていて、その数は60兆個ともいわれています。それらの細胞は、もとは受精卵という一個の細胞が時間をかけて成長してできたものです。
受精卵の段階では、神経細胞にも筋肉細胞にも、皮膚細胞にも、そのほかどんな種類の細胞にもなれる可能性を持っています。この何にでもなることができる細胞のことを、ちょっと専門的にいうと「全能性」の細胞と呼んでいます。ところが、私たちのからだをつくっているさまざまな種類の細胞は、いったん神経細胞や筋肉細胞などに成長してしまうと、基本的にはほかの細胞になることはできなくなってしまうのです。
こうして一度、役割が決まってしまった細胞は、全能性が失われて、再び受精卵のような何にでもなれる細胞には戻らないと長い間考えられていました。ところが、最近の生命科学の研究では、なんらかの方法を使えば、人工的に何にでもなれる細胞に戻すことができるのではないかと考えられるようになったのです。

───いろいろな科学者が、どうしたら何にでもなれる細胞がつくれるか、研究したのですね。

ええ。私たち京都大学の山中研究室では、山中伸弥教授を中心に研究に取り組み、2006年に“何にでもなれる細胞”を人工的につくりだすことに成功しました。それがiPS細胞です。iPS細胞は、induced Pluripotent Stem cellの略で、日本語では「人工多能性幹細胞」といいます。
受精卵を「全能性の細胞」、iPS細胞を「多能性細胞」と区別しているのは、iPS細胞は胎盤をつくることができず、そこまで全能ではないということからです。

───そもそも、iPS細胞はなぜそんなに注目されているのですか。

後から詳しく説明しますが、iPS細胞は、失われたからだの機能を回復させる再生医療に貢献できる可能性を持っていることが大きな理由です。すでに役割の決まってしまった皮膚などの細胞から、何にでもなれる細胞をつくることができれば、心臓の筋肉細胞(心筋細胞)をつくって心筋梗塞の治療を、またインスリンを出す細胞をつくって糖尿病の治療をするなど、これまでの治療法とはちがう方法で病気を治すことが可能になると期待されているのです。

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